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週刊東洋経済「視点」-2004/02/21 号

「2005年問題」を契機に日本も長期的戦略の構築へ

政府が唱える景気回復の実感が湧かない。輸出主導の大企業だけが改善し、GDPの4分の3を占める非製造業や、地方経済、特に中小企業での確かな回復はほど遠い。少子高齢化の加速で社会保障への信頼が低下、財政も平時の先進国としては類をみない深刻さだ。消費税引き上げを唱えることが、まるで政治家の勇気を試す踏み絵のように言われている。

確かに広く増税論議を行うことは国家の土台を守るために歓迎すべきだが、その前にやるべきことは沢山ある。無駄な歳出は切り詰めるべきだし、何より最重要課題は、経済の主役である民間経済や企業を元気にすることだ。これは、企業の競争力回復で財政再建が達成された90年代の米国の経験でも明らかである。経済の足腰強化を怠り、増税に耐えられない経済状況のまま増税しても元の木阿弥だ。国際競争力を維持する米国、急成長する中国など東アジア、EU統合を契機に反転攻勢を図る欧州など、力強く変化する世界経済において「勝てる日本経済」を再構築することが、財政や社会保障に安心感を取り戻す必要条件である。

世界で勝てる日本経済を構築するにあたって、いま「2005年問題」に関心が集まりつつある。05年にEU域内で国際財務報告基準(IFRS)と国際監査基準(ISA)が上場企業の連結財務諸表に義務付けられ、さらに、今から3年後をめどに米国と欧州で会計基準が統合されそうだ。まさに、会計や監査の世界的な統合が進展している訳だ。

これに対し、わが国の経済界や行政は05年以降も日本の会計基準での開示を認めるよう運動を行うという。確かに、欧州市場のみに上場する日本企業55社の多くが日本基準で開示し、約120の発行体がEUで社債による資金調達を行う現実は大きい。

しかし、この問題は近視眼的な「お願いベース」で、自国の会計基準を認めてもらうことで済む話ではない。世界的な会計基準統合の意味は、東欧諸国までが世界から投資を呼び寄せるために、グローバル基準による競争を始めたという点にある。こうした流れに伍して「ヒト・モノ・カネ」を日本に集めていかなければ、「勝てる日本」の構築はおぼつかない。

その基本こそが、会計や監査基準の透明性、企業統治や市場監督体制への信頼性である。今後、例えば、外国企業の国際財務報告基準による開示の日本国内受入れや英文開示に止まらず、わが国企業が国内で国際基準開示を行うことも奨励していく位の覚悟が必要ではないか。

「日本には日本のよさがあるのだから、それを世界に理解してもらえばよい」という、いわば「天動説」は早く卒業して、自らがダイナミックに変わる「地動説」に転換することが大切である。まず目先の「2005年問題」を超えて、長期的戦略の下に世界に向かうわが国の将来像を描くことが先決だ。