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週刊東洋経済「視点」-2003/12/20 号

「総合対外戦略本部」を設置し 行政領域超えた政治判断を

ASEAN諸国や、韓国とのFTA(自由貿易協定)交渉が、ようやく本格交渉となる。メキシコとの交渉ももたついているが、まとまるだろう。各省だけにゆだねずに、首相官邸が締結に向け本腰を入れ始めた事が大きい。

FTAは「早い者勝ち」だ。「デファクトスタンダード」を作った国が勝つ。対外政策もスピードが重要になっている。タイミングを逸することなく複雑な利害や世論をまとめ、的確な決断ができる政治のリーダーシップが不可欠だ。

そこで、国益の優先順位を定め着実に実行するため、政治主導で「総合対外戦略本部」を官邸に設置することを、改めて提案したい。単なる各省の利害調整を超えて、安全保障、貿易、ODA(政府開発援助)政策はもとより、対アジア、対中東政策など、外交の基本方針を含めた大局的な理念に基づく対外戦略を策定、実行させるエンジン役を果たすのだ。

日本はこのほど、ASEANとの間で「東南アジア友好協力条約(TAC)」の締結を決めた。アジアの連帯を象徴するこの条約への参加は、かねて日本、中国ともに要請され、中国がすでに締結の意志を明確にしていたにもかかわらず、日本ではこの夏、政治の場で議論されることなく行政内部で一時断念された。

その理由は米国への配慮、と聞く。実態は大臣の関与も定かでないような判断だった。一国の進路を決める対外政策の根幹がこのような決め方をされてよいのか、とわれわれが問題提起し、10月のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の際、日本はASEAN諸国から強く勧奨されて、締結の決断に至ったようだ。まさに政治の判断が欠けていたのだ。

今、「東アジアのコミュニティー作り」の主導権争いが激しさを増している。日本は、この点でももっと政治のリーダーシップを前面に出すべきだ。たとえば、タイは「アジア協力対話」との会議をすでに2回主催、昨年には「アジア政党会議」も開催したが、これら会議の次回会合はいずれも中国に任された。その中国は、1990年代末、「アジア版ダボス会議構想」がラモス元比大統領らから提唱された際、日本が躊躇している間に自ら主催することを決め、昨春、今秋の「ボアオ・フォーラム」として、国を挙げて定期的な会議外交の場を確保した。

また11月、韓国で私の友人が、韓国の政、官、財界、大学などを巻き込んで「東アジア・コモン・スペース(EACOS)」との会議を立ち上げ、アジア大洋州地域の閣僚クラスらを集めてネットワーキングの場を提供している。各国ともこうした場の設定は、行政の判断領域を超えた政治決断だ。これも「総合対外戦略本部」の重要な任務になる。

対外政策のグランドデザインとその実現への戦略、戦術を、政治が明確に描き直さねばならない。そのための新たな仕組みが不可欠である。