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週刊東洋経済「視点」-2003/03/29 号

日本のアジア戦略に政治的意思を

昨年1月、小泉首相は豪州、ニュージーランドを含む「日・ASEAN包括的経済連携構想」を打ち上げた。朱鎔基首相が2010年までにASEANとFTAを結ぶ、と公表した直後だけに、日本のアジア外交戦略を示す良い機会となった。しかし、その後のわが国の戦略展開を見ていると、何よりも政治的な意思を欠いているように見える。

中国は公表後一年にしてASEANとのFTA枠組み合意に達し、その政治的意図が十分伝わってくるが、日本の対タイ、フィリピン連携構想交渉はもたついている。先日バンコクで参加したアジア中心の会議でも、指導的立場の人々は、日本の変化のスピードに対して失望感を抱いていた。かつてはお手本としていた日本が、「ちょっと困ったお客様」のような存在になりつつある。日本がASEAN諸国に対し、これまで約12兆円ものODAを供与し、民間も同じく約12兆円を投資して約5000社の日系企業が120万人の雇用を現地に提供している事実との落差に驚く。日本の明確な対アジア外交戦略、それも政治的意思に裏打ちされた強力な実行力を伴う戦略の構築が必要だ、との思いをいよいよ深めている。

その一方で、このところタイが元気だ。2年前に就任したタクシン首相は、国内的には日本から学んだ「一村一品運動」などを通じ、地方での政権基盤を強める一方、中央では、すっかり若返り、高学歴化した国会議員が政策立案・実施の前面に出て、官僚主導から政治主導に政治システムを急速に転換しつつある。新設した3人の通商代表は、首相の意を体して常時海外を飛び回っている。

政治主導は外交戦略にも現れている。タクシン首相は、従来のASEANの枠を超え、東アジアからパキスタンなどまでを含むより広いアジア共同体を構築する意思を持って昨年6月、「アジア協力対話(Asia Cooperation Dialogue:ACD)」を主催、本年も6月にロシアも新たに加えて開催するようだ。また昨年11月には2年ぶりの国際アジア政党会議をタイ愛国党主催でバンコクにて開催、タクシン首相自ら基調講演後、最初のセッションの議長をこなす腰の入れ方だ。さらに、アジア通貨危機を教訓に、「アジアの貯蓄をアジアの長期投資に」を目指した「アジアボンドマーケット構想」もぶち上げている。そして今年の目玉は、10月のバンコクでのAPEC首脳会議。矢継ぎ早に、ヨーロッパ顔負けの会議外交を仕掛け、与党政治家が実現に向けて一丸となっている。その際、人間関係を基本に、強固な二国間関係を築いた上で、大きな多国間連携を構築しようとしていることは注目に値する。

農業問題や人的移動問題で滞っている日・タイ連携構想交渉に対しても、タクシン首相自ら柔軟な対応による交渉妥結の早期化を提案している。政治からのメッセージに対しては、政治が、明確な意思と構想力をもって応えなければならない。