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週刊東洋経済「視点」-2001/10/13 号

もう振り出しには戻れない不良債権の処理問題

先の小泉首相訪米時にブッシュ大統領は、日本が不良債権処理などの改革を断行することで、世界経済のけん引役へ復帰するよう要請した。当然だろう。

三年前、日本は同じ岐路に立ち、正しい道を行けば今ごろはけん引役となっていた。双六でいえばこの三年で「振り出し」に戻ってしまった。今こそ国家のガバナンス能力が問われている。国の指令塔を作り、司々が責任を果たすしかない。

事の本質は簡単だ。オールジャパンの銀行と企業のバランスシートに穴が空き、穴埋めには結局公的資金しかない。その方法は預金者保護か、銀行への資本注入のいずれかだ。そして、すべての出発点は「貸出資産の厳格な評価」であり、行き着くところは「資本不足」だ。例えば市場で増資できるかどうかのテストも経て銀行を仕分けし、大整理を行う。もちろんこの処理を先延ばせば傷が大きくなることは経験済みだ。
今、私がかねてから主張してきたRCC(整理回収機構)の機能拡充などが提示されているが、四点ほど指摘したい。

第一に、「厳格な資産評価」と「資本不足への対処」はあくまでもワンセットだ。不良債権の大きさを冷静に見れば、すでに注入された公的資本を毀損させ、追加注入もありうべしとの覚悟で臨むしかない。三年前の早期健全化法は厳格な評価抜きに「『健全行』をさらに健全にする」という国家的フィクションだったが、金融庁もようやく要注意債権を市場実勢に応じて評価すると方針転換をしたようだ。そごうでは無担保債権一・五兆円のわずか五%しか回収できず、紛れもない実質破綻先だった。結局、厳格な資産評価が全ての鍵と認識するのに三年も費やした。

第二に、RCC拡充の理由だ。RCCに不良債権を移す意味は、その中にスウェーデンやタイで用いられたAMC(資産管理会社)的機能を作り、不良債権を一カ所に集中させることにある。つまりRCCが「唯一の債権者」となれば、借り手企業に本格的リストラを余儀なくさせるようにプレッシャーをかけられる。おまけにRCCは銀行でもある。


第三に、RCCの活用は単なる公的関与の増大ではない。ここ三年、民間任せでは抜本処理は進まなかった。そこで今回は枠組みとしては公的なRCCを活用するが、その業務は民間に委託し、民主導で処理を進めるのだ。米国RTC成功の秘訣も七万人余の民間人投入だった。

第四に、世界同時不況の可能性を前に、時間的ロスは許されない。リスク管理債権のRCCへの一斉移管すら必要かもしれない。その際の価格は「暫定市場価格+ロスシェア」か、「『簿価-引当金』とするが、事後的ロス発生時には銀行が普通株式で現物充当する」としてはどうか。

今度こそ不良債権問題から本当に訣別する決意で、組織としてのRCCの役割は五年で終わらせよう。三年後に再び日本が「振り出し」に戻ってはならない。