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週刊東洋経済「視点」-2000/04/29 号

官民の人材「流動化」で霞が関を建て直せ(5月6日合併号)

昨秋来の政府委員制度廃止やクエスチョン・タイムなどの導入で、政治家の政策能力についてディスクロと競争原理が導入され、やっと政治の質に変化の兆しが出た。司法制度改革論議も軌道に乗りつつあり、ルール重視社会での司法のあり方が検討されている。

ひるがえって行政府を見ると、確かに省庁再編は行われるが、立法や司法のような質的変化が起きる気配はあまり感じられない。バブルの反省から大蔵省改革が始まり、一部では犠牲者まで出しながら幾つかの分野で過去の行政スタイルからの訣別が行われたものの、優秀な人材が役所を離れ、モラルも若干低下ぎみと聞く。

しかし霞が関に使命感に燃える優秀な人材を集めることは、民間中心に日本が栄えるためにも極めて重要だ。

問題は何をもって「優秀」とするかだ。中国の科挙を模した明治の文官試験以来、上級試験、I種試験の難関をパスした霞が関の官僚が、百年余の近代日本を支えてきたことは衆知のこと。

しかし、日本の官僚は今でも本当に「優秀」と言えようか。まず、専門的優秀さの傍証である博士号保有者数においては、他の先進国にはるかに遅れている。ここまで国際化が進み、世界の変わり行く論理が国内にもどんどん入り込み、環境問題のように長期的視座が一層必要になる中では、「たこつぼ」のように縦割りが徹底している今の霞が関の組織と人事政策の下で政策対応が追いつかない。過った政策の訂正・変更も現行の異動パターンゆえに遅い。

お役人だってみな人間、「うちのパパは偉いんだ」と子供に言われたいはずで、今のような「縦割り組織」で行われる人事の下では、例えばほんの2〜3年前になされた同じ役所仲間の政策をあえて否定や変更したりはなかなかできない。また、天下り先を作るなど自己増殖する官僚組織が非難されるが、今のような人事政策や民間社会への自然な中途転出が許されない状況のでは、仲間や自分の生き残りのためにはそうした動きも当然の帰結なのかもしれない。

もはや日本も、公務員試験合格という「20歳代初めのIQ的優秀さ」をいつまでも霞が関の参入障壁や評価基準のベースとせず、ポリティカル・アポインティを含め官僚組織の枠にとらわれない採用を行い、官-民間の自然で機動的な人材移動を実現すべき時が来ている。そして、このことが柔軟な政策対応を可能にし、真に優秀な人的資源を社会的に有効配置・活用しながら国の繁栄を実現する道だと思う。こうした雇用形態は大統領制の米国だけでなく、議院内閣制の英国、ドイツ、オーストラリアなどでも近年拡大しつつあり、英国では課長以上の欠員の2割近くは公募されているという。

要は、官民を問わず雇用流動性を飛躍的に向上させることが日本生き残りの決め手。民間での受け皿としてのNPOなどのインフラ整備はもちろんだが、少なくとも行政府の人事政策改革の責任は政治が早急に取るべきだ。

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