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週刊東洋経済「視点」-1999/10/09 号

「政治主導」の先達に学ぶ

先の通常国会で国会審議活性化法が成立した。三本柱は、国家基本政策委員会における党首間の議論、政府委員制度の廃止による国会での原則、政治家のみの答弁導入、副大臣・大臣政務官設置と当面の政務次官増員による政治化による政策決定への関与増大だ。いずれも心は「政治主導の政策決定」。

今回の試みは、議院内閣制下での民主主義の先達であるイギリスの制度を意識したものである。政治にもやっとディスクロージャーと競争原理が導入され、日本の政治に新しい流れが生まれる可能性が出てきた。
もっとも同じ議院内閣制でも、先日訪れたオーストラリアはイギリスとも若干異なり、参考になる。

まず驚いたのは、首相以下全大臣の執務室が議会内にあり、担当する役所に大臣が座るのはせいぜい月に一回。ちなみにイギリス、ドイツ、カナダでは日本同様、大臣は各役所で執務している。また、首相の権限がアメリカの大統領のように強い。十二名の独自アドバイザーを中心とする首相事務所および、官僚であっても出身官庁と全く関係なく首相のためだけに働く一〇〇名もの政策アドバイザーがいる首相府が首相を全面的に支えている。

さらに、各大臣は三〜七名の独自政策スタッフを持ち、政策決定を自ら行い、官僚はそのための幅広い政策オプションを提示する。また、閣議こそ政策決定の場であり、毎週一回、数時間、長ければ七時間程度、事前調整ができなかった事項を延々議論する。前日の事務次官会議で決定済み事項のみを短時間「議論」する日本の閣議とは大きく異なる。

しかし、オーストラリアでも長らく官主導の時代が続き、政治主導になったのはせいぜいここ十五年ほどという。今では、「選挙で結果責任を取る政治家こそが政策を決めるべきで、官僚は責任を取れない。したがって官僚は大臣に専門家として政策的選択肢を示し、最終判断は政治家が行う」との考え方が官僚の側でも一般的になっている。
「ガバメント」という言葉は我が国では「政府=行政府」と解されてきたが、果たしてそうだろうか?大臣や政務次官は、「政府の人」と称せられ、党や議会の役職からは外されてきた。しかし、これまで政務次官でもないときに「あなたはガバメントに属しているんだろう」と欧米人から尋ねられ戸惑ったことが何度もある。

どうやら彼らはいわゆる「政府・与党」を「ガバメント」と呼んでいるようだし、オーストラリアでは、「『官僚機構』と『選挙で選ばれたガバメント(与党)』」との表現があって、両者を対時する概念とすらとらえていることを発見した。

確かに、「ガバーン」とは「統治する」ということだから、国を統治する与党政治家は「ガバメント」そのものなのだろう。オーストラリアでは議会人がその責務を捨てずにそのまま大臣等行政のポストに就き、政治主導で政策立案・執行する民主主義の一つの形を示している。

もちろん、「チェック・アンド・バランス」は重要で、立法府の暴走を牽制し国民の意思を政策に反映することが大切だが、イギリスを源とし独自の政策決定スタイルを築きつつあるオーストラリアから日本が学べることは、けっこうありそうだ。

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