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日経ビジネス-2009年4月6日号掲載記事

「未来投資特別勘定」50兆円を

●危機対応予算3つのポイント
 通常予算とは別枠で透明性確保
 総理は「国家ビジョン」を示せ
 未来を見据え産業構造転換を


 グローバル化や金融工学の発達で信用創造が大きく拡張した今回の危機は、80年前の「昭和恐慌」や「世界大恐慌」を凌ぐことになるだろう。2008年度のGDP(国内総生産)成長率をマイナス3%、2009年度をマイナス7%とすると、その需給ギャップは70兆円に達すると見ている。

(需給ギャップは70兆円)
 昨年来の政府の緊急対策は総額75兆円と言っているが、これは事業費ベースで、多くは信用保証枠など。減税効果などを含めても需要創出ベースでは数兆円にとどまる。思い切った追加の財政出動が不可欠だ。
 各界からも来年度予算の成立後の補正予算を求める声は大きい。私も「速やかな政策実現を求める有志議員の会(速やか議連)」などを通じて、年明け以来30兆円規模の投資が必要だ、と主張してきた。今や最低でも20兆円は必要という声が主流になっている。
 しかし、既に述べた需給ギャップの大きさを考えると、それでも十分とは言えない。2月の自動車の国内生産が6割減となるなど、経済危機は深刻さの度合いを増している。
 私はこの際、通常の予算とは別枠で「未来投資特別勘定」を設け、この先2年間で最低でも50兆円を投じるべきだと考える。バラマキを排するために透明性を高め、新しい「国のかたち」を作るために思い切って使うべきだ。危機の今だからこそ、日本の「国のかたち」を大きく転換する100年に1度のチャンスとも言える。
 では、どんな国を目指すのか。国家ビジョンを示すことこそ政治の使命だろう。しかし、政権交代を声高に叫ぶ民主党も、民主党には政権担当能力がないと批判する自民党も、国家ビジョンを全く提示できていない。次の総選挙に向けた本当の意味のマニフェスト(政権公約)を示していないのだ。
 最も大事なのは、国のリーダーである総理大臣自らが国の将来ビジョンと大きな戦略を示すことだ。それがなければ有識者や官僚、与党議員は個別の戦術を描くことができない。
 財源がない、という声もある。まずは天下りの根絶などを通じたムダの撲滅、埋蔵金や政府保有資産の活用、国会議員歳費カット・定数削減などを行うのは当然だ。だが危機に直面している今、不足分は建設国債、赤字国債の発行もやむを得ない。これらの国債は「未来投資国債」として通常予算分の国債とは別枠で管理してはどうか。日本銀行による引き受けを検討してもいい。
 将来は消費税率の引き上げは不可避だが、その際は原則として社会保障に使う目的税化すべきだ。また基本食料などを非課税か低税率にする、複数税率化も必要だ。

(日本を救う5つの戦略)
 では危機を乗り切る国家ビジョン、すなわち、新しい「国のかたち」とは何か。近く私なりの考えをまとめて発表したい。基本は@日本の産業を高付加価値型に転換する「新・産業革命戦略」A日本を物流・情報の中心地とする「新・開国戦略」B人材・技術・文化の中心を目指す「日本文化・文明力戦略」C責任ある債権国として、金融・資本の中心地を目指す「債権国型金融戦略」D医療や社会保障の再整備を急ぐ「安全・安心立国戦略」-の5つ。これに50兆円を集中投入すべきだ。要は産業構造の思い切った転換以外に日本が繁栄していく道はない。思い切った財政出動で産業構造を転換し、人的資源を再分配し、将来の成長に結びつく新しい仕組みを作り上げることだ。
 政治への不信が再び高まっている。危機を乗り切るために、今こそ国家のリーダーが自らのビジョンを掲げ、国民と絶えず対話しながら、官民問わずに英知を結集し、政策を実現していく時である。